IPOのコストについて

目次


はじめに



IPO(新規公開株)は企業が株式を公開市場で販売するプロセスであり、多くの費用が伴います。本コラムでは、IPOの際に発生する様々なコストについて詳しく解説します。

IPOの準備費用


企業がIPOを行うためには、多岐にわたる準備が必要です。これには以下の費用が含まれます。

  • 財務諸表の監査費用:契約前のチェックとして、IPO準備可能かどうかを確認する「ショートレビュー」があります。監査法人によってコストは変動しますが、200~300万円ほどになります。契約後は少なくとも毎年1,500万円ほどかかります。子会社や支店が多い場合や、海外子会社がある場合などは更に高くなるのでご注意ください。
  • 証券会社とのコンサルティング費用:IPOを実現するには、監査法人から適正意見をもらうだけでなく、証券審査ののち東証審査を経て承認を得る必要があります。これら審査を突破するために、内部管理体制の構築や計画を達成する必要がありますが、そのための協力機関として証券会社の公開引受部や営業部がいます。これらに対するコンサルティング費用で、月10万円~50万円程度かかります。
  • IPOコンサルティング費用:多くの会社で、準備を開始するにあたりノウハウが不足しています。知見のある人を採用するにも、どんな人を採用すべきか判断に悩むと思います。このような場合が多いため、IPOコンサルティングを利用することをお勧めします。社内ですべて賄うことも戦略として可能ですが、上場時のみ必要な書類の作成などは多くありますので、うまく使い分けていくことをお勧めします。
  • 人件費:IPOでは、管理人員を社内で適切に配置する必要があります。機能としてCFO(管理部長)・経理・財務・法務・労務・総務・内部監査を持つ必要がありますので、最低でも5名程度はバックオフィスで必要になります。そのため、最低でも年額3,000万円程度は予算として見積する必要があります。

引受手数料


IPOを実施するためには、証券会社による東証への推薦、及び機関投資家へのアプローチが必要です。引受手数料は通常、発行株式の金額の5%から10%程度です。

ただし、これは会社が支払うのではなく、IPO達成した際の調達資金から天引きされる形になるので、資金には影響しません。

法務・コンプライアンス費用


POを実施するにあたり、法務・コンプライアンス関連の費用も必要です。これには以下が含まれます。

  • 弁護士費用:インサイダー取引規制や、投資勧誘行為に該当しないように、公表する情報は専門家である弁護士に相談する必要があります。多くの場合はタイムチャージですが、少なくとも300万円程度は予算で見込む必要があります。
  • 規制当局への提出書類作成費用:社内で完結出来ればよいですが、経営をしていく中で様々な事象が起きるため、専門家に相談すべき内容が出てきます。多くの上場会社は弁護士事務所と顧問契約しており、日頃からリスク管理をしています。顧問契約は最低月10万円からを予算で見込む必要があります。
  • コンプライアンス費用:行う事業に応じて固有のリスクがあります。社内で完結させる方法もありますが、規制法規も日々アップデートします。必要に応じて専門家の力を利用して適切な体制を構築し、維持していきましょう。

これらは上場に必要な法的手続、及び内部管理体制の管理を適切に行うためには、欠かせない費用です。

上場後の維持費用


POが成功した後も、上場企業としての維持費用が発生します。これには以下のようなものがあります。

  • 開示書類の作成費用:社内で完結すれば問題ないですが、開示書類を作成できる経理は市場でも貴重ですので、コンサルティング会社に外注している上場会社が多くいるのが実態です。書類によりますが、100~200万円程度はかかると思います。
  • 投資家向け広報活動費用:個人向けや機関投資家向けのIRイベント開催、証券会社における広告、ブランディングコンサル費用など、株価を伸ばすのではなく、維持するだけでも多くの費用が掛かります。
  • 配当金の支払・株主優待の実施:グロース市場では配当している会社は少ないですが、プライム・スタンダードでは多くの会社が配当を実施しています。もしくは株価対策も含めて株主優待制度を設けている会社もありますが、これも予算に見込む必要があります。
  • その他:株主総会費用、書類作成に係る印刷会社費用、

これらの継続的な費用を見込んで、財務計画を立てる必要があります。

結論



IPOの実行には多くの費用が伴います。準備開始から上場までで2億円は最低でも見積もる必要があると思います。しかし、これらのコストを効果的に管理することで、企業は成長と発展のための資金を調達することができます。適切な準備と計画がIPO、及びその後の健全な成長の鍵です。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次